発行冊子の紹介


第85号 2016年10月 発行

   目次  
【85巻頭言】                      
現地の重み                      上遠野浩一
高尾山古墳出土鏡とその意義              西川寿勝  
後期群集墓と津とミノ・ミカハ・ミヘ          尾関 章
会員広場【小休止】
アンデス通信38                   市木尚利
百済観音の飛鳥時代(第八回)             山下輝幸
「方~里」表記をめぐって(1)            中村 修
古代史研究のレファレンスについて(2)        上遠野浩一
   
【巻頭言】現地の重み                 上遠野浩一
 久しぶりに直木孝次郎著『奈良』(岩波新書)を読み返した。1971年発行であるから、今から40年以上も前の著作になるが、少しも古さを感じさせない。大変読みやすい文体で、しかしレベルを落とすことなく、奈良の各地域を古代史の視点から読み解き、奈良から見た古代史を、自説を含めて、高校生にもわかるような平易な文章に著している。考えてみれば、奈良はどこをとっても古代史の主役になり得るところであり、言い換えれば、奈良の古代史はそのまま日本古代史になる。筆者は高校時代にこれを憶えるほどに読み返し、これを片手に、奈良盆地全域を歩いた。筆者にとっては原点である。  
 この本のもう一つの特徴は、古代史の舞台奈良盆地の現地案内を行っているところである。直木はこの本を書き下ろすに当たり、おそらく幾度となく現地を訪れたことであろう、直木は現地に立って古代史を考え、本論を綴り、現地案内までも行った。我々は、この本を読むほどに、思わずそこに行って実際にこの目で確かめたいと思う。さすがに当時の交通の便はもう古いが、紹介されている史跡は(消えたものもあるかもしれないが)、直木の見た古代と同じものである。
 久しぶりに読み返し、直木孝次郎に、現地の重みを感じた。改めて、現地を訪れることの大切さをかみしめた。